高松高等裁判所 昭和26年(ネ)238号 判決
控訴代理人は原判決を取消す被控訴人が別紙目録記載の農地につき、昭和二十四年三月十一日売渡通知書を訴外宮地梅記に交付してなした農地売渡の行政処分は無効なることを確認する、訴訟費用は第一、第二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は原判決事実摘示と同一であるから、こゝにこれを引用する。(証拠省略)
三、理 由
訴外高知市潮江地区農地委員会が昭和二十三年六月十五日別紙目録記載の農地の売渡の相手方を訴外宮地梅記とする売渡計画を定め、その計画に基き被控訴人が昭和二十四年三月十一日右訴外人に売渡通知書を交付して右農地の売渡処分をしたこと並びに本件農地はもと山内豊景の所有であつたが、財産税法により物納せられて昭和二十二年三月政府の所有となつたもので、自作農創設特別措置法施行令第十二条第一項の決定のあつた農地であることはいずれも当事者間に争がない。原審証人堀川清浄原審並びに当審証人宮地梅記同控訴(原告)本人の供述を綜合すれば本件農地は控訴人が訴外宮地梅記から賃貸して昭和十九年頃から昭和二十四年春頃まで耕作していたものであることが認められるから、自作農創設特別措置法施行令第十七条第一項第三号により控訴人が本件農地につき第一順位の売渡の相手方となるべきところ、控訴人が買受の申込をしなかつた(このことは当事者間に争がない)のであるから、同施行令第十八条所定の者を第二順位の売渡の相手方と定むべきである。然るに原審証人川島益治の証言及び原審並びに当審における控訴(原告)本人の尋問の結果によれば控訴人の右買受の申込をしなかつたのは右宮地との間に宮地が本件農地を買受けるが、同人は控訴人に従前どおりそれを耕作させるという合意があつたためであることが認められる。してみると控訴人は耕作をしない考えで買受の申込をしなかつたものでないのであつて、本件農地については右施行令第十八条所定の第二順位の売渡の相手方というものはないものと言うべきである。それ故右宮地は次順位の売渡の相手方にもあたらないから結局同人に本件農地を売渡したのは違法の処分というの外はない。しかしその違法は要するに農地の売渡の相手方の資格に関する事実の誤認に過ぎないのであるから、この違法を以て直ちに当然にその処分が無効であるとは言いえないのであつて、本件処分を法律上当然無効ならしめるものでないと解すべきである。しかのみならず、本件当事者間に争ない訴外宮地梅記が本件農地の永小作権者であるということ、原審証人川島益治の証言によつて明らかな如く右宮地は七十歳以上の老人ではあるが、年の割合には元気で農を本業としていて十分に農耕の能力があり、又本件農地以外にも約四反の農地を耕作し農業に精進する見込ある者であること等を綜合すれば、右事実の誤認が本件売渡の処分を無効ならしめる程重大な瑕疵であるとは到底解せられない。されば控訴人の本訴は失当として棄却すべくこれと同旨の原判決は相当である。よつて民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 前田寛 近藤健蔵 萩原敏一)
(目録省略)